飲食業界の転職事情

【本ページの目次】

給料が低くて休みがない業界ではなくなった(一部だけ・・・)

飲食業にお勤めの人の転職相談では愚痴をよく聞きます。

「給料が低すぎて生活できないです」
「休みが少なすぎて仕事以外の事を考える余裕がないです」

挙句の果てには「飲食業は外して仕事を紹介してください」と言われる事もありますが、飲食から転職できる職種は営業職しかありません。しかも未経験で営業職への転職となると、テレアポで個人客を捕まえてシナリオセールスを展開する人員です。それはまた精神的にかなりきつい仕事なので安易におすすめできません。「接客(サービス)」と「営業(セールス)」は似て非なる物です。

飲食経験者は飲食業界で転職先を探すことを優先したほうが、待遇改善は見込めます。飲食業界にも人材を大切にするホワイトな新興企業が伸びてきています。ただ、まだ求人全体の2~3割ぐらいしかありませんので、まともな企業の探し方をお伝えします。

まずはワタミ事件が社会問題に発展した後、飲食業界の一部は変化したという事を知っておくことが必要です。そのことについてより詳しく説明しますね。

「ビフォー・ワタミ」の暗黒時代は、一生働ける職場ではなかった

ビフォー・ワタミの時代は、飲食店経営者の立場が強すぎました。かつての経営者は、良い立地さえ確保できればそれなりの売上が見込めた為に、社員の労務環境にまで目を向けることは稀でした。むしろ人材はコスト要因と認識され、出来るだけ安く済ませるという考え方が一般的。だから13時間労働で7連勤させても問題なし。「固定給の社員を出来る限りたくさん働かせたほうが、お店の利益に貢献する」と本気で考えていました。

その結果として飲食業界全体がブラックな職場となってしまったのです。社員は少しでも良い環境を求めて1年程度で転職を繰り返すジョブホッパーになったり、業界に見切りを付けて他業種へ転職する人が多数いました。経営者はそれでも離職率の高さをあまり問題にしません。なぜなら人材を募集すればたくさんの人が応募してくるので、大量採用・大量離脱で会社は回っていたのです。

「ワタミ・ショック」

転機となったのは、ワタミ社員の過労自殺です。マスコミから総攻撃を食らい、飲食業界の労働環境が社会問題となりました。
客観的に考えると「死ぬくらいなら会社を辞めればいいのに。。。」と思いますが、それでは当事者の気持ちを十分に理解できているとはいえません。長時間労働を連日繰り返していると、判断能力が鈍り仕事でミスをします。さらに「目の前のこの苦境から逃れたい」という現実逃避が起きます。それが積み重なり自己嫌悪に陥ると、自分は社会で役に立たない人間だと諦めてしまうのです。

ワタミ社員の問題がクローズアップされた後もマスコミがブラック企業への追求の手を緩めなかったので、飲食業界の労働環境が世間一般に周知されるようになりました。それに追い打ちをかけるように、従業員個人がSNSで飲食業界のブラックな体質を拡散して反撃を開始。そうなると若手の間で飲食業界への就職を避ける傾向が鮮明となり、今ではどこの企業でも極度の人手不足に陥っています。

「アフター・ワタミ」の時代は2極化
新勢力3割に入れば年収1,000万円超えもある

今はアフター・ワタミの時代となり、飲食業界は2極化しています。

1つ目は、ブラック体質を引きずる旧型の企業(ビフォー・ワタミ)です。未だに全体の約70%ぐらいはそのままです。正確に言うと口先だけは「アフター・ワタミ」に変わってますが、本質的な部分は「ビフォー・ワタミ」です。これは従来型のブラック体質でしか収益を維持できないので、企業体質を変えたくても変えられないというのが本音なので、この手の企業は避けるべきです。

2つ目は、人材へ積極的に投資していく新勢力です。例えば店舗の販促立案策を社員に任せて、その企画をネットで情報発信して閑散期の予約を埋める事を成功した企業があります。しかもその売上アップ分は社員へ分配して、待遇を改善しました。
他にも、一流ホテルと同等の研修制度(サービス&マネジメント)を確立して、社員のスキルアップに熱心な企業もあります。その会社の平均年収は500万円以上をキープし続け、スター店長になると年収1,000万円を超える報酬を支払っています。人材育成に成功した社員を他社に引き抜かれない為の防衛策でもありますが、労使双方にとってwin-winの関係を築けています。

「ビフォー・ワタミ型企業」と「アフター・ワタミ型企業」を見分ける方法

人材をコストとしか認識しないブラック体質な企業が、未だに飲食業界全体の7割を占めています。ですから「上場している大企業が母体だから大丈夫だろう」とか「多店舗展開している有名店だからしっかりしているだろう」という思い込みは禁物です!

それでは「ビフォー・ワタミ型企業」と「アフター・ワタミ型企業」を見分ける方法をご紹介します。

①収益力が低い会社はバッサリ切り捨てる

鉄則は本業が儲かっている企業から探す事です。私がキャリアコンサルをしていて驚かされることは、入社する企業の業績を気にせずイメージだけで入社を決める人がいることです。いくらブランド力があっても儲けがなければ、給料も上がらないし福利厚生も良くなりません。仮に求人情報で好条件が提示されていても、その持続可能性を疑うべきです。

ただ個人の力だけで企業情報を調査するには限度があります、ですから、第一段階の絞り込み(企業業績)は飲食業界を専門とする転職エージェントを利用して、収益力の低い会社は候補先から切り捨てましょう。

飲食業専門の転職エージェント

会員登録するとキャリアアドバイザーとの面談があるので、「業績が良い会社だけ紹介してください」とはっきり伝えましょう。また既に自分が気になっている企業がある場合は、その企業の収益力や人事体制を調べて欲しいと依頼する事も可能です。

②店舗見学

エージェントから転職先候補を紹介してもらったら、その企業の店舗へ客として行きましょう。そこで店舗スタッフの人柄やオペレーションをチェックするのです。曜日と時間を変えて何度か通えば、社員教育レベル・人員配置・人間関係が見えてきます。
特にランチ後や閉店間際の客数が少ない時間帯がおススメです。店の片づけをしながら次の準備に入るアイドルタイムは、サイドワークや教育トレーニングを実施しているケースが多いです。
このように求人票からは絶対に読み取れない情報からも、間違った選択肢(ビフォー・ワタミ型企業)を選ばないようにするべきです。

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