銀行員の市場価値とキャリアの見込み

市場価値が高まる30歳前後で方針を決める

銀行員の転職ベストタイミングは30歳前後。
優秀な人物が外資系投資銀行・コンサルファーム・不動産投資ファンドへ転職すると、いとも簡単に給料が数倍に跳ね上がる。
または将来性のある事業会社であれば、少なくとも今より好待遇で迎え入れてくれる。

このことは銀行側も理解している。
だから幹部候補となるめぼしい人材は、企画や人事といった要職へローテンションする。
もしくは海外留学を経験させ、将来への期待値を高めて、自尊心をくすぐってくる。

逆に考えると、30歳前半でこのようなチャンスに恵まれなかったら「その他大勢」という事。
銀行という組織は減点主義。
この時点で「その他大勢」に分類された人に未来はない。
10年後に退職勧告の候補者となる事は必須なので、市場価値が高い時に転職してしまうのがいいでしょう。

「外資=不安定」vs「国内=安定」という概念は間違っている

銀行員

外資系企業は、30歳前後の社員に対しても年収2~3千万というオファーを出す。
国内の銀行員だと、50代で役員にならなければ到達できないレベルなので魅力的ではある。

それなのに多くの人が外資転職へ踏み切れない理由は、職の不安定さ。
給料は高くても、レイオフや国内からの撤退という不安が常に付きまとう。
外資系はハイリスクハイリターンというイメージが定着している。

でも本当に外資だけが不安定なのだろうか?
国内銀行に勤めていても、安定はないと考えるべきだろう。

2002年の金融再生プログラム発動以降、銀行経営はブレまくった。
統廃合を繰り返しメガバンクは3行に集約。
閑職へ追いやられパワハラを受け、銀行を去って行った行員は数知れず。

未だに支店は過剰気味。
それなのに貸出先となる法人の借入需要は弱い。
少子高齢化で個人向け住宅ローンも伸びる見込みはない。
つまり利ザヤが稼げないので、これからも銀行業界のネチネチとしたリストラは続きます

安定と高収入を両立させる為には、キャリアを磨ける職場で働く事

外資系銀行員

外資は社員をすぐにクビにするというイメージがあるかもしれませんが、それは誤解です。
解雇を通告できるケースとして、①個人的スキルに落ち度がある、②経営不振のいずれかに該当しなければ、むやみやたらに解雇できません。

この解雇通告を国内企業のようにネチネチやるか、契約事項として書面でハッキリ伝えるかの違いだけ。
そして会社からクビを宣告される場合は、ほぼ必ず有効期限付きの退職パッケージが提示される。

  • 1カ月以内に退職してくれ
  • 年収2年分相当の退職金割り増しを支給する

大抵このような内容の事が書かれている。
ここで争う人は皆無で、みんな素直に辞めていく。

その最大の理由は、元々年収が高額だから退職することで4~6千万円ぐらいの一時金を手にすることが出来るから。
これだけあれば再就職までアタフタ慌てる必要はない。
勉強時間を確保して次のステップアップを狙う人や、長期バカンスでリフレッシュする人もいる。

そして、外資は人材流動性が高く市場がオープンなのが特徴。
だから一定期間この世界で働けば、再就職先は見つけやすい。
仕事内容や取引先との関係はほぼ変わらず、社名が変わるだけというケースが多い。

この「会社名」より「自分の名前」で仕事をしていくスタイルは良い。
外部環境の影響で会社の経営が怪しくなっても、自分だけは脱出して同業他社で働き続ける事が可能
このシステムのほうが、「職が安定している」と言えるだろう。

実は外資から日系銀行への転職者が急増している

実は外資系金融機関から日系銀行への転職者が、近年非常に増えている事実をご存知ですか?

その背景は、銀行(特に地銀)が投信販売などの手数料ビジネスを強化したいけど、行内に適当な人材がいない為に外資系人材を積極採用しているのです。
あと、フィンテック関係でシステムエンジニア(特にネットワーク系&セキュリティ系)を募集しており、IT系企業から銀行へ転職する人達も増えています。

つまり日系銀行が欲しているのは、専門スキルを持った人材ということ。
自行で育ててこなかった専門人材を、傭兵として外部から獲得しようとしているのです。
銀行間の横並び体質が淘汰され、市場競争にさらされると、その流れが加速することは必至。

ボーとしていると人生台無しになりますよ。
新卒で入行して20年間下積み生活をしていたのに、ふたを開けてみたら要職に就けるのは外資系からきた転職組だけという事態になりかねません。

脱銀行、一般企業への転職で気を付けること

仕事

一昔前までは銀行員というステータスを捨てられなかった人が多かったけど、近年はアッサリと捨てる人が増えている。
そしてこの傾向はだんだん強くなっていると感じる。

  • 金融庁からの呪縛を逃れたい
  • 銀行特有のルールにこれ以上付き合えない
  • 間接的ではなく直接ビジネスに携わってみたい
  • 仕事はやりがいで選びたい

特に若い人ほど強いストレスを感じている。
デジタルネイティブな20代にとって、銀行という古い体質で抑圧されるのは我慢できないものがある。
その反動からか、歴史の浅いネット系企業やゲーム会社への転職を強く希望する人が一定数いる。

未成熟な企業での仕事は面白い事が多い。
でも変な会社に入ってしまうと、そこでキャリアが終わってしまうこともある。
この認識に欠けている人は危ない。

社長も若くて組織も小さければ、若くしてマネージャー職に就くことは可能。
もしかしたら目先の年収も、銀行員時代よりちょっと多く貰えるかもしれない。
それが長く続くとは思わないほうが良い。

仮に3~4年頑張ってみて、会社の将来性に限界を感じて転職先を探してみたとしよう。
名もなきベンチャー企業のマネージャー職の肩書など見向きもされない。
また一からやり直しを余儀なくされる。

脱銀行で事業会社へ転職したいなら、まずは大手で潜り込めるところを探したほうが得策
そして大手の社内教育プログラムをしっかり受け、勝負できる実力を蓄える事に注力しましょう。

新たな一歩を踏み出す勇気は大切ですが・・・
過信は禁物です。

自分に特別な何かがあるか?
銀行員という肩書がなくなった時の実力は何か?
よく考えながら行動しましょう。

銀行から事業会社(経理職)への転職状況

中小企業の経理・財務職への転職口はたくさんある

銀行員であればご存知の通り、中小企業の経理・財務の社内競争は緩い。
転職後数年で役員まで上り詰める人は結構いる。
社長との相性次第では、地元企業の経理職は悪くない選択肢と言える。

彼らが元銀行員に抱いているイメージは良い。

  • 身元が堅い
  • 資金調達&銀行交渉に強い
  • 書類業務に長けている

デメリットは特にない。
中小企業であれば、元銀行員の転職はかなり歓迎される。
特に融資業務の経験者。
このルートの転職は40代になっても通用する。

大企業の経理職は無理か?

会計処理

20代であれば大手の経理部へ転職できる可能性は十分あるので、挑戦してみると良いでしょう。
ただ30代になると、やはり実務経験がないと厳しい。
特に35歳以降になると、ほぼ書類審査で落とされる。

中途採用されるのは特別なキャリアを持っている人だけなので、ゼネラリストである元銀行員は不利です。
30歳を超えて経理職を目指す場合は、やはり中小企業がターゲットとなるでしょう。

履歴書に書くと反応が良い資格

  • 銀行業務検定
    (財務・法務・税務のそれぞれ3級は取得していて当たり前。できれば2級。)
  • 日商簿記1級
    (経理職への転職なら、最低でも日商簿記2級。)
  • FASS検定
    (実務に近い検定試験なので、良い判定結果を得られると評価される。)
  • TOEIC750点以上
    (国際業務が増えているので、TOEIC好スコアは絶対的に有利。)

経理処理の自動化が進むことを意識した戦略を立てる

便利な会計ソフトが出回っている現代。
起票や伝票管理といった主計課が担っていた業務は大幅に削減され、今後も会計処理の自動化は益々進むことでしょう。

そのような時代の移り変わりの中で、経理・財務職としてどのようなキャリアを築くかを考えなければなりません。
色々な選択肢がありますが、将来的に経営企画を目指すというのは一つの解
高度な数値判断をして、経営陣へ助言する立場。

また企業の統廃合が増える世相では、渉外能力の高い財務担当者は貴重な存在です。
元銀行員が狙うべきポジションでしょう。
このように1歩先を考えた思考トレーニングをして、面接に臨むのが良い結果につながると思います。

銀行員が異業種へキャリアチェンジする場合の戦略については、下記サイトの情報がとても有益です。
銀行員を辞めたい 金融業界から異業種への転職先はどこが良い?

金融業界内での転職はどう?

投資銀行への転職

投資銀行

真っ先に思い浮かぶのは外資の投資銀行への転職でしょう。ゴールドマン・サックスやモルガン・スタンレーといった投資銀行は高給だし華やかさがあります。そのような企業で自分の能力がどこまで通用するのかチャレンジしてみるのはアリでしょう。

とはいえ、そのレベルになると挑戦できる人は限られてしまうので、もう少し現実的なアドバイスをしておきます。
国内の投資銀行に目を向けると、財閥系と独立系に分かれ、面白いのは独自戦略をとりやすい独立系です。GCA、日本M&A、マーバルパートナーズなどが有名です。

これらの企業が扱う案件は小粒になりますが、銀行で培った業務知識や会計事務所とのネットワークを存分に活かせるので相性はいいはず。東商リサーチによると、全国約265万社のうち5社に1社が70歳以上の社長が経営する中小企業で、その多くが事業継承問題を抱えています。それらの企業に友好的M&Aを提案すると決まりやすく、市場ニーズは大きいと見られています。また年商1億~10億円以内の国内M&A案件をまとめるには個人の力量が大きく影響するため、ビジネスマンとしてやりがいを感じる仕事でもあります。

アセットマネジメント業界への転職

アセットマネジメント業界は一般的にはなじみが薄い業界かもしれませんね。証券会社を小売業だとするとアセットマネジメント会社はメーカーにあたいする存在といえば分かり易いですか?
アセットマネジメント会社には、運用系・営業系・バックオフィス系の3職種があります。

①運用系
ファンドマネージャーやアナリスト職です。一般的にはアナリストとして経験を積んだ後、ファンドマネージャーへと昇格します。上級職になればなるほど、給与に占めるインセンティブ給の割合が高くなる傾向にあります。また顧客の資産状況にダイレクトに響く仕事なのでプレッシャーに強い人でないと務まりません。

②営業系
銀行や証券会社や機関投資家向けの法人営業になるので、深い金融知識とマーケット情報に対するセンスも要求される。さらに海外ファンドの取り扱いも増えている為、英語力もあったほうが良い。アセットマネジメント会社の営業は、証券会社のリテール営業とは違ってマーケティング職に近いと思った方が良いでしょう。

③バックオフィス系
リスク管理・コンプライアンス遵守への取り組みだけでなく、投資家に対する情報開示も膨大な書類作成が必要となります。ただ元銀行行員からすると常日頃からこのような業務に離れているので、それほど違和感なく取り組める内容と思われます。

不動産金融業界への転職

不動産証券化

銀行員であればノンリコースローン融資で不動産金融業界の人達と関りを持ったこともあるのではないでしょうか?その経験から銀行員の中には不動産金融の世界に興味を持っている人は少なからずいるようです。
資産流動化法が制定されたのが2000年でその翌年にREITが誕生し、この業界が始動したといえます。

  1. アレンジャーによるファンドの立案
  2. 銀行や機関投資家によるファイナンス
  3. デューデリジェンスによる物件精査
  4. 信託銀行による不動産信託の設定
  5. アセットマネージャーによる投資実行&ファンド運用
  6. プロパティマネージャーによる物件管理

このように不動産証券化は、非常に多種多様な利害関係者との調整が必要となります。
それゆえあらゆる局面で専門知識を必要とするのですが、全てに精通している人材はいない為、意外とやる気を全面に押し出したポテンシャル採用が通用するという興味深い業界です。
ただ金融業界の中でも、特に景気変動の影響を受けやすい業界だという事だけは覚悟しておいた方が良いでしょう。

10年計画を立てて準備を始める時がやって来る

銀行員のセカンドキャリア

30代半ばに差し掛かった銀行員はセカンドキャリアを考える時期に入る。
早すぎることはない。

40代で同期に役員が誕生すれば、片道切符の出向が待っている。
すぐに転籍となり、給料は3割カットでその後の昇給はおろか出世の見込みもない。
出向先企業からは「給料泥棒」と陰口をたたかれながらも、生計を維持するために満員電車に揺られる日々になる。

こんなはずじゃなかった。。。
やり場のない怒りを叫びたい気持ちはわかるが、自衛策がなければ会社の指示に素直に従う以外に選択肢はない。

①取引先の業務内容に深く精通する

銀行員ほど多種多様な業界にズカズカと入っていき、儲かっているのか駄目なのかを判断できる仕事はない。
その権利を融資獲得のためだけに使うのはもったいない。
是非とも将来自分が骨をうずめるに値する業界を見つけるべきです。

そして見込みがありそうだと思ったら、取引先の営業活動もトコトンやってみる。
決算数字だけでなく自分の肌感覚で将来性を吟味しましょう。
もちろん取引先の社長には喜ばれるし、本業にもプラスになるに決まっています。

②家族(特に妻)への根回し

銀行員の妻

転勤が多い銀行員の妻は、専業主婦であることが多い。
働いていたとしてもパートなので、世帯収入で考えるとそれほど裕福な暮らしが出来るわけでもない。
それでも世間体があるから、平均以上の生活レベルを維持している家庭が多い。
おそらく「銀行員=高収入」という幻想にとりつかれているのだろう。
ちょっと無理している分、何かを我慢している。

それなのにある日突然、夫が関連会社へ出向になり(ブランドを失い)給料も下がると聞かされたら、かなりショックを受けます。
なので徐々に先輩方から聞いた話を妻にも共有して、近い将来自分の身にも訪れることという心構えを持ってもらうしかない。

③覚悟を決める

自分で転職先を探すのか、会社に進路をゆだねるのか?
いずれにしろ覚悟を決めてから、40歳を迎えるべきです。

転職すると決めたなら、業務以外で社内の人との付き合いは極力断る。空いた時間で社外に人脈を作る努力をする。
会社に進路をゆだねると決めたなら、より良い出向先を確保するために社内営業に尽力する。

ゆっくり時間をかけて決断しましょう!
優柔不断が一番損をします。

本社は不良資産の損切タイミングを計っている

切迫している固定資産の減損処理

銀行の営業支店は、駅前1等地のビルというのがお決まり。利便性が高く市民への認知度向上にも一役買っていました。ところが銀行の収益力が落ちだした現在、この強靭な店舗網は「実は不良資産なのではないか?」とあぶりだされてきています。

その背景には様々な要因がある。一番の問題は銀行業が構造的不況産業に陥ってしまったのではないかという懸念。ネットバンクの浸透・コンビニATMの普及・仮想通貨/フィンテック企業の勃興と、規制に守られた銀行業の聖域にズブズブと第3者が侵入し始めてきたのでたまりません。それに追い打ちをかけるかの如く、日銀によるマイナス金利政策が始まり、銀行の収益力はシュリンクする一方。

そうなると過去に投資した支店営業網やATMシステムの維持費の大きさが目立ってしまうのです。世間一般では国際的な時価会計基準へとシフトしているので、銀行業界も土地・建物・設備・ソフトウェアを再評価すべきだと声が日増しに大きくなっています。

ここで固定資産の減損処理が必要となる兆候(一般論)をまとめます。1~3までは、ほぼどの銀行も当てはまる状態といっても過言ではないでしょう。

  • 採算悪化・・・過去2期の損益が赤字or営業キャッシュフローがマイナス
  • 回収難・・・稼働率の悪化or機能面の著しい減価
  • 経営環境悪化・・・技術革新による陳腐化or原材料費の高騰or販売量の悪化
  • 市場価格悪化・・・市場価格から50%以上の下落

店舗・設備だけでなく、人員削減も始まっている

IT化・AI化が進む10年後には、銀行員の数は現在の半分以下で済むと言われています。なのでどの銀行でも、中高年層には希望退職を募り、新卒の採用も控えめにしています。ただそうなると現在30歳前後の働き盛りの人達のボリュームが厚くなってしまいます。経営陣も年齢構成がいびつになる事は承知済み。彼らに今辞められたら困るから。でも本音を言うと、10年後には辞めて欲しいと思っている。

銀行員の出向先として有力だったゼネコン業界も、最近は出向者の受け入れを拒否しています。空前の金余り社会で融資を申し出てくれる銀行はいくらでもありますし、なにぶん建設業界は景気が良いので強気です。
今すぐ転職活動を開始しなくても、頭の片隅で今後のキャリアプランをシュミレーションしておかないと、いざという時に行き先がなく路頭に迷うことになる事は目に見えています。専門スキルを持たない中高年銀行員を受け入れてくれる転職先は少ないですよ。

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